11月27日(土)、岡山シンフォニーホールにて「岡山イノベーションコンテスト2021」
ファイナルステージが開催された。当日はファイナリスト16組による優れたビジネスプランが披露され、
会場客を魅了した。グランプリと各部門の大賞受賞者を紹介紹介します。
そなえ株式会社
森 三貴子
当社が提案するのは「We Love Baby(ウィラバ)」による母子健康手帳のデジタルトランスフォーメーション(DX)だ。妊娠の状態や子どもの発育状況を手軽に書き込めるという利点がある紙媒体の母子健康手帳をアプリ「ウィラバApp」で補完し、将来の病気予防へと機能も拡大させる。
各ページを撮影すれば、掲載情報をOCR(光学文字認識)でデジタル化するため手で入力する手間がいらず、紛失してもバックアップデータから記録を復旧できる。また、アプリと連動して使う「ウィラバPaper」を発行。妊娠や出産乳児健診などの節目には、掲載されている二次元バーコードからアクセスし、アンケートに回答してもらう。データは将来の疾病予防や発症時のフォロー体制などで活用できるほか、行政やパートナーシップを結んだ企業が求める子育てや医療に関するビッグデータになる。ウィラバを通じて妊娠に期待が持てる社会を実現することは、誰もがよりよく生きるウェルビーイングにつながると確信している。
笠岡商業高等学校
髙見 弥央 / 田中 菜々美
横山 悠大 / 畝川 凌一
新型コロナウイルス感染症に対するワクチン開発の安全性確認に、カブトガニの血液が使用されている。今後も世界で起こりうる感染症から人類を守るため、笠岡市でカブトガニを養殖し、血液を供給する。
養殖地には旧繁殖地の金浦地区を予定。栄養分を含む海水を循環させるパイプラインを敷設する。総費用は15億円に上るが、ベンチャーキャピタルから資金調達し、目標の1万匹を飼育できれば年間18億円の収益になる。
このプランによって「海の豊かさを守ろう」「すべての人に健康と福祉を」「働きがいも経済成長も」「住み続けられるまちづくりを」というSDGs(持続可能な開発目標)の四つの目標を達成し、人類とカブトガニとの共存の道を実現できる。
岡山大学
吉田 裕哉
就活において自身の〝面接力〟は客観的に判断できないため、改善点がわからず悩む学生は多い。その課題を解決するのが、現役の人事担当者と何度でも模擬面接ができるオンラインサービス「面接図鑑」だ。Zoomで模擬面接を受けると、AIと人事担当者がロジカル力、創造力など10項目を4段階で数値化。強みと弱みを可視化でき、的確なアドバイスをもらえる。面接は録画され、他の学生の面接も見放題。自身が苦手な項目に強い学生の面接を視聴して練習もできる。
企業側のメリットとしては、コミュニケーション力など学生のソフトスキルを測った上でオファーを送信でき、ミスマッチを防げること。同サービスは8月にリリースし、現在400人以上の就活生、6社の企業が利用している。
P!MODEL LABO
内田 圭
私の趣味はタミヤが製造販売するミニ四駆。改造を快適に行うため、使いやすいアイデア工具を自分で設計。地元・岡山の町工場に製造を発注し、販売もしている。当社の工具商品はSNS(会員制交流サイト)で評判となり、販売開始以来、順調に売り上げを伸ばし、世界7カ国にも輸出している。
国内外にあるホビーやアニメ関連の巨大市場のニーズを私が読み取り、それに応じた商品を高い技術力を持つ岡山の町工場で製造する。工具以外にも、将来的にはオーダーメードのコスプレ衣装の販売サイトなどを運営する。今後は県内の企業だけでなく工業系高校・大学とも連携し、岡山のものづくりの未来の担い手を育てていきたい。「MADE IN OKAYAMAをともに世界へ」を合言葉に、ボトムアップ型の地方創生を目指す。
高梁高等学校
大森 麻琴
国内の鳥獣による農作物被害は年間160億円に上り、森林を荒らすなど生態系にも影響を及ぼしているが、狩猟者は高齢化で減少している。そこで狩猟者の確保と狩猟文化継承のためのスクールを設立し、ワナ免許を中心に狩猟免許取得のための講習や熟練者による実技講習を実施。行政から鳥獣駆除を請け負って収益の柱とする。一般向けには狩猟見学ツアー、野生鳥獣ウオッチングを開催し、観光資源化も目指す。人と野生動物が共存し、都市部と中山間地域、高齢者と若者など多くの人が交流する機会になることを願う。
岡山大学大学院
長島 慶樹
知識やスキルがなくても画像認識AIを開発でき、ビジネスに容易に導入できるノーコードAIプラットフォーム「TSP」の開発・提供に取り組んでいる。例えば製造業で良品と不良品を分類するAIの開発には、学習させる画像を準備すればよく、ワンクリックでAIを現場の装置にインストールできる。サブスク(定額制)型の提供なので導入コストは安価だ。このAI実装技術は来年1月、特許申請する予定。日本のAI導入率が低い原因であるAI人材の不足と開発コストの高さという二つの課題をTSPが解決する。
(尾崎)岡山大安寺中等教育学校
(丸口・勝)倉敷古城池高等学校
丸口 天音 / 尾崎 光 / 勝 まりな
倉敷の地で源平水島合戦(1183年)、藤戸合戦(1184年)が繰り広げられた。水島合戦で平氏軍は日食に乗じて源氏軍に勝ったとされる。天文現象が決め手の戦いは世界的にも珍しい。この戦いを題材に、日帰りの「時空を超える歴史体感ツアー」を考案した。藤戸地区の史跡を訪ね、船で水島灘を巡った後、倉敷科学センターのプラネタリウムで水島合戦当日の日食を再現した独自プログラムを鑑賞する。同ツアーはコロナ禍で中止を余儀なくされている小中学生の修学旅行の代替となり、郷土の歴史を新たな世代につないでいける。