11月25日(土)、岡山シンフォニーホールにて
「岡山イノベーションコンテスト2023」ファイナルステージが開催された。
当日はファイナリスト18組による優れたビジネスプランが披露され、会場客を魅了した。
グランプリと各部門の大賞受賞者を紹介します。
岡山大学歯学部
棚井 あいり
要介護者など、何らかの理由があって歯科医院を訪問しづらく、必要な歯科治療を受けられていない人は多い。「訪問歯科」は需要に供給が追い付いておらず、マーケットに発展性がある。
そのような状況を踏まえ、「Oral Insight Service」で訪問歯科医療を通じて要介護者のQOLの向上を目指そうと考えた。本サービスは、患者(要介護者)や介護サービス提供者と連携し、予約日に歯科医療従事者が患者の所在地を訪れて治療する。利用料は歯科治療に対する保険点数で決まっている対価を支払う。
またビデオ通話による遠隔医療形式で、口の中や全身の状態を診察し、どのような治療が必要かを判断する。これはDXを活用した地域格差解消の手段でもあるが、同時にどんな人にも気軽に治療を受けてもらうための配慮でもある。
本サービスのカギは女性歯科医に参加してもらうこと。職場選びで女性が重視する、仕事とライフイベント(結婚、出産など)を両立できる環境をつくり、患者さんにも女性歯科医にもメリットを生み出す。
おかやま山陽高等学校
★河田 光明 / ★阪口 陽大 /
★中村 和咲 / ★安原 里穂子
有本 理玖 / 岡 修也 /
岡本 大雅 / 小野 凱翔
佐伯 孝二郎 / 寺岡 永翔 /
中務 真大 / 三宅 翔太
宮宗 大輔 / 井原 末結 /
倉内 心々菜 / 桑村 亜樹
清水 咲良 / 単 思奇 / 平岩 心結
(★は発表者)
浅口市寄島町のカキ養殖で、近年、クロダイによる食害が広がっている。この問題の解決に向け、クロダイの需要拡大を図るプランを考案した。
おいしさを伝えるため、広報活動ではクロダイのレシピや知識を掲載したリーフレットを作り、配布する。傷みやすい点を克服しようと、本校調理科と協力しクロダイを使ったホワイトシチューの缶詰も開発した。また、クロダイに親しんでもらう体験活動として、海水井戸のいけすをつくり、クロダイの釣り堀として親子連れをメインターゲットに運営する。
このプランでクロダイの漁獲量増によるカキ養殖の食害減少、漁業収入増、地域の魚を食べる文化の復活と、地域に貢献できる。地元の漁業、食文化が未来に引き継がれることを願う。
岡山大学病院 薬剤部
川端 崇義
災害のたび、被災地に送られる大量の医薬品を在庫管理できない課題が浮き彫りとなる。西日本豪雨の際も今使える薬が何かをすぐに把握できず、東日本大震災でも集まった薬の15%は有効活用できなかった。
そこで、持ち運びができて、オフラインで動く在庫管理アプリケーションを開発。医薬品のバーコードをアプリで読み込み、近距離通信で医師の端末に転送することで、必要な医薬品を処方することができる。導入対象は、行政や薬局、病院など全国25万カ所。類似サービスは他に存在せず、防災備蓄品の在庫管理に使用することも可能だ。実際に災害の実動訓練に活用したいという声もあり、5年での全国導入を目指す。災害時の速やかな医療提供に貢献したい。
邦美丸
富永 邦彦
乱獲や気候変動などで魚は減り続け25年後には食用魚がいなくなるという説もある。さらに漁業者の収入は市況に左右され不安定で、漁業者数も減少傾向。これを打開するのが、注文を受けてから漁を行う「完全受注漁」だ。
昨年試験的に実施したところ、価格が安定し売り上げは2倍、操業時間は2分の1、漁船の燃料も3割削減できた。働き方改革で、家族との時間も増えた。さらに余分に捕れたら海にリリースすることで、資源を守りながら漁を続けることができる。
漁師仲間、漁協、自治体、飲食店と連携し、どこでも魚が食べられる仕組みが整いつつある。受注漁の観光体験も始まり、新たな収入源にもなっている。個人から始まった受注漁だが、将来、市場単位でできるようにしたい。
山陽学園大学
金塚 優輝
Z世代の持つ「エモい」視点から出されるアイデアを活用し、食品・食材ロスを削減できるプラットフォーム事業を考えた。
食材提供事業者は無料で参加でき、売りたい食材を同事業の掲示板にアップ。Z世代の参加者は食材の活用方法を考えて書き込む。購入希望事業者は食材や活用方法について閲覧したり質問したりできる。
Z世代ならではのアイデアで大人の予期せぬ食材のマッチングを提案したり、今後消費の主役となる層に市場調査できたり、SNSを活用したPRが期待できたりと、一歩進んだ食材ロス削減に挑戦する。
岡山県立矢掛高等学校
三宅 茉莉
就実高等学校
岡野 菜津子
人口減少対策や地域の活性化などが課題となる中、幕末に井原市に滞在するなど岡山に縁があり、道徳経済合一説を唱えて「みなが富む社会」をつくろうとした実業家渋沢栄一(1840~1931年)の思想に迫る1泊2日のツアーを提案する。ツアー初日は井原市内のゆかりの場所を巡り、夜は同市美星町で「渋沢栄一」の名を持つ小惑星や星空を観察する。2日目は備前市に移動し、特別史跡・旧閑谷学校(同市閑谷)で渋沢の思想の根本となった論語を学ぶ。経営者や起業家、学生らに参加してもらい、みんなが豊かに暮らせる社会の実現を目指す。
特定非営利活動法人
輝くママ支援ネットワークぱらママ
頼定 弥生
人工呼吸器やたん吸引などが日常的に欠かせない医療的ケア児。災害時は医療機器の電源確保が命の確保に直結する。そこで、電源やプライベート空間を提供できるキャンピングカーを届ける仕組みを考えた。キャンピングカーレンタル業者などと協働し、全国で100台を登録。適合した車両を届けるため、医療機器のワット数などをあらかじめ記録するシステムも開発した。中小企業の協力を得て80カ所の駐車スペースを確保。避難訓練や防災キャンプも行う。誰一人取り残されることのない、安心して過ごせる社会をつくっていく。